UEFA Champions League 2021/22 City vs PSG 2nd Leg、結果2-1で終わった試合はスコア上での差よりも大きくCityが内容面で上回っていたことは誰の目にも明らかでした。この試合では今シーズンのCityの試合の中で最も人数を割いてプレスを前線からかけ、それがうまくハマりPSGの強力な前線3人にボールが渡らないようにすることに成功していました。

この戦術分析ではこの試合の戦術を分析し、それを下敷きにFM22の戦術に落とし込みます。

Pressing

試合開始から激しく、人数を割いてPSGに対して前線からハイプレスを行いました(前半途中でプレスの仕方を変更、変更後を紹介)。トップのSilvaがDMのParedesを見ながらGKまでプレスをかけ、相手側の右CBにはIHのZinchenko、左CBにはウィングのMahrezがプレスをかけ、前線の5,6枚が連動してプレスをかけます。相手のCB,GKは足元の技術が高いとは言えないためタッチラインに逃れるあるいは、大雑把なロングパスになりCityがボールを回収という展開が非常に多く見られました。そしてプレスが機能することで、PSGの前線の3枚のスターにいい形でボールが入らないようにすることに成功しました。このプレッシングはLiverpoolのような素早いカウンターへ移行するプレスというより相手のビルドアップを阻害するためのプレスであり、ボールを得た後も攻め急ぐという姿勢は見られませんでした。


Build-Up

Cityは2CB・GK・DMの4枚の菱形でビルドアップしました。MbappeはDMのRodriへのコースを塞ぐように位置取りしましたが、トップのSilvaが中盤まで下りることでフリーでボールを受けることで相手のプレスを回避しました(画面中央右端がSilva)。Cityのビルドアップに主に参加する4枚はキーパーのEdersonを含めパスの技術が高く、長短パスを織り交ぜながら前線にボールを供給できます。

Possession

Cityはボールを失うと素早くプレッシングをかけボールを再度収めると攻め急ぐよりもポゼッションを重視し、Canceloが攻撃参加に積極的な左上がりの形で、中盤の左サイドで数的優位を作りながら攻撃しました。

Cityの先発メンバーの平均ポジション Wyscoutより引用

そこから前線の右ウィングのサイドに張っているMahrezに、CanceloあるいはRodriからの長い対角線のMahrezへのパスを出し、サイドを変え、PSGの中盤の並列の3枚をサイドに揺さぶることで大きなスペースが生じます。



そして、相手のディフェンスをスルーパスにより崩し、エリアのサイド周辺から低いクロスを入れフィニッシュを狙っており、そのような形で得点もしました。

Cityのパスの分析 Wyscoutより引用

そして、相手のディフェンスをスルーパスにより崩し、エリアのサイド周辺から低いクロスを入れフィニッシュを狙っており、そのような形で得点もしました。

Manchester City Tactics in FM22

このCityの戦術は前線でのプレスに5-6枚を割くため高いリスクを負った戦法であり、特定の状況でクリティカルに働く非汎用的な戦術です相手が4-3-3で、相手がDMとCB2枚、GKでビルドアップする。また、相手の前線に強力な選手が揃っており、それに対してディフェンスラインとGKの足元が不安定であるとき初めてリスクに見合ったリターンのある戦術になり得ます。EPLではLiverpoolやArsenal相手を相手にした場合、前線のメンツという意味では条件に合致しますが、Van DijkやBen Whiteのような正確なロングパスを蹴れる選手を有するチームを相手にするにはリスクに見合ったリターンが得られるか疑問符がつく戦術です。優れた選手が前線に偏っている、頭でっかちなチーム相手には非常に有効な戦術だと考えられます。

FBの左のIWBで対角線の長いロングパスで左右に相手を揺さぶることを目的にロングパスの頻度を上げるよう指示を追加しました。
IHにはそれぞれシュートの頻度を上げるよう指示。
右のウィングはサイドに張らせました。
前線からのプレスの指示を機能させるため、前線の選手に相手選手のマークをPSG戦を参考に設定。


Result








Discussion

高い攻撃力と非常に硬い守備でリーグ優勝しましたが、チャンピオンズリーグでは一戦目のレッドカードによる退場での大敗の影響で早い段階で敗退してしまいました。カップ戦は全体的に芳しくなく、これは高いインテンシティーの戦術と過密日程によるローテーションと怪我人の増加の影響が大きいと考えられます。ポジショニング位置を比較するとGundoganが右によりすぎでCFの選手が孤立しているのでそこの修正が必要かと思います。CFのF9を1つポジションを下げトップ下に移動させても良かったかもしれないですね。プレスに関してはPSG戦を参考に設定しましたが、相手の戦術など状況に応じて臨機応変に設定すべきなのでどこまで機能したかは疑問符がつくので設定を外してもいいと思います。