今シーズンのLiverpoolは12/12時点でManchester Cityに1pt遅れを取り、2位につけていますが、得失点差ではトップに位置しており、飛ぶ鳥を落とす勢いです。

また、14節終了時点のゴール数・xG・シュート数・枠内シュート・アシスト・xA・チャンスの数といった多くの攻撃のスタッツにおいてリーグトップに立っています。

Depth & Formation

信頼できる選手が少なくとも2人はどのポジションにもいます。中盤はユーティリティーの高い選手が多く、厚みがありますね。
Liverpoolは今シーズン全ての試合で4-3-3を使っています。FBが高い位置を取り、攻撃時は2-1-4-3の形をとっていることが下図からわかります。Liverpoolの攻撃のうち41%が右サイドのエリアで行われており、Passing NetworkからもRCMがLCMよりも高い位置を取り、攻撃に寄与していることが読み取れます。



14節終了時点のゴール数ではRWのMohamed Salahが11でリーグトップを走り、アシストでもSalahが8でまたしてもトップ、それに続き、RBのAlexander-Arnoldが7という結果を残し、Liverpoolの右サイドは相手にとっての脅威になっています。

LIverpoolの戦術をサッカーの4局面(In Possession, Negative Transition, Out of Possession, Positive Transition)に分けて、順に説明していきます。(Liverpoolファンのため、いつもより長くなりますがお付き合いいただけると🙇‍♂️🙇‍♂️🙇‍♂️)


In Possession

Build-Up

Liverpoolは基本的に、後ろから丁寧に繋ぐことを好みます。GKからのスタートの場合には、LCBのVirgil van Dijkを含めDFの選手が主なパスの選択肢で、前線の選手に当てるような長いパスを出すことは少ないです。

Wolves戦のパスマトリックス, Wyscoutを参照

CBから組み立てる際、まず4枚のDFとDMで4-1の形を形成します。相手は前進を妨げるために、DMのFabinhoにマークをつけ、パスコースを切ろうとします。すると、両IHのどちらかが両CBの間か、CBとFBの間のポジションにドロップし、パスを受けようとします。ドロップした選手のおかげで下りた側のFBは高い位置を取ることができるようになります。このドロップは主に左サイドで行われます。これはLCMのThiagoは特にボールを足元に受けたがり、下がることが多いためです。この左サイドでのドロップの傾向が上で示したLiverpoolのPass NetworkのIHの右肩上がりのポジションにも反映されていますね。

また、このビルドアップ時のドロップの形はThiagoのような特定の選手の特性に依存したものではなく、チームとしての形であることが、LCMがOxlade-Chamberainの場合も同様のプロセスが行われていることからわかります。

また、左サイドのみならず、右サイドでも以下のようにRCMの選手がドロップします。どちらのサイドでも下りた選手のおかげで、下りた側のサイドのFBの選手が高い位置を取ることができています。


相手が、積極的に前線からプレスをかけてきた場合には前線の選手、あるいは高い位置を取ったFBにロングパスに向かってロングパスを蹴ります。逆に、プレスをかけにこない場合には両CBともにドリブルで持ち運べるだけ前に運ぶことで相手の前線のディフェンスを越えることもできます。


 LiverpoolのDF陣は足元の技術、パスともに高い水準を誇っており、またDMの選手も絶えず動くことで味方のためのパスコースを作り、さらにIHの選手がドロップすることで数的優位性も維持し、安定したビルドアップを可能にしています。そのため、ボール支配では今シーズン、Man Cityに続き、63%で2位のポゼッションを記録しています(FOTMOBを参照)。

Attacking

後ろのポジションから順に選手と役割についてみていきましょう。LiverpoolのFBは両サイドともに高い水準でプレイしていますが、今シーズンは特に右サイドのTAAが攻撃に大きく寄与し、その高い創造性でチャンスを量産しています。

PlayerMinutesChances createdxAAssistsAssist/ 90 
T. Alexander-Arnold964
36
4.90
7
0.65
Mohamed Salah1,170
30
2.46
8
0.62
Curtis Jones322
3
0.11
1
0.28
Thiago341
7
0.46
1
0.26
Naby Keïta365
5
0.97
1
0.25
A. Oxlade-Chamberlain368
5
0.37
1
0.24
Roberto Firmino369
7
0.49
1
0.24
Konstantinos Tsimikas389
11
0.85
1
0.23
Andrew Robertson780
15
1.78
2
0.23
James Milner391
7
0.76
1
0.23
Jordan Henderson900
18
1.32
2
0.20


LBのAndrew RobertsonとRBのTAAのチャンスクリエイトの比較のデータから、右サイドで多くのチャンスが作られ、ゴールにつながっていることがわかります。特に左サイドと比較した時、右サイドのハーフスペースから多くのアシストが生まれていることがわかります。TAAがサイドにとどまらずハーフスペースに侵入することが相手の脅威になります。

Sky Sports参照

LCMのThiagoは前述のように、このポジションに入る他の選手(Oxlade-Chamimberain・Curtis Jones・Milner)と比較して、ビルドアップ時に深くドロップしてボールを受け、そこからどの選手にでも正確なパスを散らす特徴があります。また積極的にボールを受け、またチームもそれを望み、パスワークの中心となります。FM22ではBoxtoBoxよりDeepLyingPlayMakerに近い特徴を持ちます。


両サイドのウィングの選手にはポジショニングに差があります。21/22のヒートマップを確認すると、LWのManeは比較的内側にもポジションを取るのに対し、Salahはサイドに張るポジションを取ります。Salahのポジショニングに応じてRCMやRBがアンダーラップする場合もあるといこうですね。


Sky Sports参照

FirminoとJotaではFirminoがより深い位置に下り、典型的なF9のように働くのに対して、Jotaは深い位置にも下りるが、より直接的にゴールに向かってアプローチし、前線で典型的なフォワードの仕事もこなし、CFのような役割といえます。


Sky Sports参照


Negative Transition

ハイプレスですね。前線から積極的にプレスをかけます。ボールを失ったらすぐにプレスをかけ、ボールを奪い返そうとします。


Out of Possession

DFラインは高い位置に引き、LWの選手が下がることでディフェンス時は4-4-2の形になります(攻守で布陣をはっきりと可変させることがFMでは難しいので再現はできていません)。RWのSalahは高い位置を取り、カウンターの脅威となります。


Positive Transition

説明不要な気もしますが、「伝家の宝刀」カウンターですね。両ウィングはスピード、ドリブル、ラストパス、フィニッシュワーク・・カウンターに必要な要素を全て持ち合わせているというべき選手です。ボールを奪ったらスピードを落とさず、前線へ攻め上がります。


Liverpool 21/22 Tactics in FM22

前述の通り、JotaとThiagoの二人の有無によるヴァリエーションを用意して製作しました。
・CF
JotaあるいはOrigiにはCF(サポート)でシュートをもっと打てを指示に追加。
FirminoにはF9の役割を。
・両ウィング
左のIFには中央に絞れを指示、逆に右のIFにはサイドに残れと、シュートをもっと打てを指示。
・LCM
Thiagoはキャリーよりピンポイントパスを優先するDLPの役割を。
Thiago以外にはBBMでシュートをもっと控えろを指示に追加。
DLPらしいアシスト⇩



・DM
HB(ディフェンス)でもっとリスクを減らせを指示。
・FB
左サイドはSB(サポート)でライン側でクロスを上げろ、プレスをもっとかけろを指示。
右サイドはCWB(攻撃)を指示。これはCWBがFBのタスクの中で唯一ポジションから離れる自由が与えられており、比較的自由にハーフスペースのレーンに出入りし、高い創造性を持って攻撃参加させるためです。
・CB
BPD(守備)でショートパスをもっと使え、ドリブルをもっと控えろを指示。
このような設定は前述したLiverpoolのビルドアップの特徴と齟齬があるように感じられるでしょうが、ポゼッションの設定でテンポを極めて高くに設定しており、これは全選手に適応されます。つまり、全体への指示としてリスクの高い選択を取るように設定されているため、選手個々への指示でより慎重さを増す指示を追加して適度なバランスを取るためです。

垂直的な縦に速い攻撃にするため、攻撃の幅はやや狭いに設定。両サイドの3人の狭いエリアでの連携や長短織り交ぜたパスで崩す、垂直的な攻撃であるため、パスの長さは、ショートパスを多めに、テンポは極めて高く。アンダーラップを指示。空中戦を強みとはしないため、変化するクロスに選択。両サイドの連携による崩しでエリア内に侵入するよう指示。
カウンタープレス・カウンター。GKからのパスはCBに。
高いディフェンスラインで守り、オフサイドトラップを使用。DFの選手が皆、スピードも高さも持ち合わせているためできる戦術。守備は、内側をしめた形。プレスの強度と効果を高めるため、タイトマークで、プレスは最も激しいを選択

Result

4冠してEPLでは得点100+、勝ち点も106を記録し、無敗で優勝しました。また他カップ戦も無敗で全て優勝しました。








Discussion

私自身、公式戦無敗でシーズンを終えることは初めての経験でした。JotaやTAAなど主力選手をそれなりの期間、故障で欠いたいたにもかかわらず、このような結果を得られたのは
・選手各々の特徴の理解⤵️
・選手個々に合わせた役割⤵️
・ターンオーバーでも質の下がらないチーム
という流れで選手に関わらず、一貫して強いチームを構築できたためでしょう(プレシーズンマッチで一敗してしまったのが惜しいですね。



戦術のダウンロード


Editor's Note

自身の愛するチームでこのような結果を残せたのは非常に満足でした。Salahがまさに現実の今シーズンのようにゴール、アシストともに獅子奮迅の活躍をしました。右サイドに攻撃の重点を置くようデザインしたので予想通りではありましたが、ここまでゴールを決めるとは思いませんでした。しかし、1シーズンでのゴール数55でもMessiの73という記録には到底及ばず、いかにそのころのMessiが凄まじかったかを感じられます。今後、シーズンゴール数の記録を塗り替えるような戦術誰々みたいなものも挑戦してみたいですね。