けい@Football Manager勢さんからの以下の質問👇にお答えするためにリベロ(攻撃)を活かす戦術を組み立て、FM23で1シーズン回して検証してみました。


パッと回答できない質問です(~_~;)、ですが興味深い質問です。
けいさんありがとうございます🙇‍♂️

僕もリベロには常々ロマンを感じているんですが、如何せんうまく使いこなすのが難しい役割です。加えて、トップレベルでリベロ向きの選手も稀少ですよね。

今回の目標は、妥協でリベロを使うのではなく、リベロを使うことによりチームの力を最大化するチームを選んで、戦術を組むことです。

そこで、まず、リベロをよく理解するところから始めました。



準備

リベロって何?

The Coaches' Voiceより引用(青いマーカー部分)して、リベロについて知ることにしましょう。

リベロとは?
リベロは、バックラインの後ろでプレーするディフェンダーであり、他のディフェンダーの後ろのスペースをカバーしてスイープする役割です。その役割は、ボール奪取後に前線へパスすること(多くの場合、カウンター攻撃のスタートとして)を含むようになり、最終的にはドリブルで中盤まで持ち運んだり、より前に出て攻撃参加するようになった。

リベロを用いるメリット

リベロは追加の守備のカバーになります。(略)

ブロックの背後に位置する追加のDFは、特にローブロックで、優れた組織化につながる可能性があります。リベロの存在により他のディフェンダーの頭に後ろにカバーがあるため、前に出てプレスをかけたり、対戦相手とデュエルをする自由と自信をディフェンダーに与えます。

ボール保持では、リベロは中央のオーバーロードを作るのに貢献します。これは、カウンター攻撃を開始する場合にも、相手がすでに守備のセットを組んでいる場合の両方で役立ちます。 ドリブルで前進することでリベロは対戦相手を引き寄せることができ、チームメイトをさらに前方でフリーにできます。それらの中央配置は、プレーの切り替えを可能にするオプションも提供します。

The Coaches' Voiceより引用


リベロを用いるデメリット

リベロが守備の背後に追加の選手を配置することで、最終ラインはより深くなります。そのため、特に中央に位置するリベロから離れたサイドで、相手が最終ラインの裏を狙いやすくなります。これが、現代のゲームでリベロが使用されない大きな理由です。


現代サッカーでリベロを使うには

前述のような大きなデメリットがあり、リベロは現代サッカーでは所謂オワコンです。

加えて、The Coaches' Voiceでは書かれていませんが、守備ではDFの背後に位置するリベロが前線に上がり攻撃参加することは、攻守の切り替わりが早く、トランジションの早い現代サッカーでは致命的にマッチしないと思います。

つまり、デメリットは以下の二つです。

①深い最終ライン
②トランジションを重視する現代サッカーとの相性の悪さ

ということで、これらのデメリットをどうすれば打ち消せるか?打ち消す戦術の方向性を探りましょう!

②のデメリット対策として、トランジションを出来るだけ減らします。つまりBarcelonaのようにボール保持を重視するサッカーか、ボールを捨ててロングカウンターになりますね。この2つのうち、リベロ(攻撃)が活きるのは前者のボール保持でしょう。

そして、トランジションをよりコントロールします。Francesco Farioliの分析記事に以下のようなトランジションの分析に関する一文があります。
トランジションの瞬間をコントロールすることは、サッカーにおいて非常に難しいことで、ある程度では不可能といえるかもしれない。そのため、できるだけ試合をコントロールし、トランジションの瞬間がいつ・どこで発生するかをコントロールすることにより、その瞬間をできるだけ短く、予測しやすいものにするという試みなのかもしれない。

この分析のように、トランジション発生する場所と時間をコントロールすることを考えていましょう。今回、メインで考えなくてはいけないのはネガティブトランジションなので、ボール保持からボールを失う瞬間を考えます。

リベロを使った守備で危なそうなのは、リベロが空けたスペースを使われることです。つまり、ボールを失った瞬間、リベロが空けたスペースは消された状態であるのが理想的です。例えば、ビルドアップ中にリベロの両脇のCBが大きく幅をとっている状態で、リベロが1段前にポジションを移そうとしている最中にボールをロストし、トランジションが発生するるのは最悪のケースです。リベロがまさにちょうど動いてポジション移動中にトランジションを発生させない。これがまず一つです。

そして、2つめは、ピッチを3分割した時の下部2/3でボールを失う場所を、味方がオーバーロードしている場所に制限し、それ以外の場所では失わないようにすることで、できるだけ相手のショートカウンターを遅らせる、あるいは、即時ボールを奪還することを目指します。

ということで、まとめますと、

・Tiki Taka
・安定した複数のビルドアップのフェーズ
コントロールされたトランジションと素早いカウンタープレス

が今回の戦術のキモです。


リベロを使うべきチーム

冒頭に書いたように、妥協でリベロを使うのではなく、リベロを使うのがチームの力を最大化することにつながるようなチームでリベロを使いたいと考えました。

リベロは、攻撃ではビルドアップから攻撃まで全てに関わり、守備では最後列を担う選手なので、リベロはチームのベストプレイヤーであるべきでしょう。

ということで、サムネイルでバレているとは思いますが笑、チームのベストプレイヤーがDM・CB共に適正なプレイヤーでリベロタイプというチームと選手を探すと、「Declane Rice」という結論になりました。West Hamでプレイすることにします。




戦術設計

トランジションの発生する場所を味方選手でオーバーロードした場所に制限するために、ビルドアップでメインに用いるエリアは中央にします。これには、Francesco Farioliの考え方を参考にしています。

また、リベロが攻撃時にポジションを移動するのをビルドアップでの優位性・プレス回避に上手く使えないかなーと妄想しています。

まとめると、FM23で戦術をいじる前にあらかじめ準備した戦術の設計図の根幹

・Tiki Taka
ビルドアップは主に中央のエリア
・ビルドアップでの優位性・プレス回避にリベロの攻撃時でのポジションの移動を利用

です。

どこまで実際のFM23の戦術で機能させられるかはわかりませんが、このような設計図の根底になるアイディアを考えました。というころで、実際にFM23上で試行錯誤しながら戦術を組み立てて、1シーズン回してみたのでご覧ください👇


FM23 West Ham - 戦術

相手のフォーメーション(正確にいえば守備時の配置とプレスのかけ方)に応じて使い分ける2通りの戦術を作りました。

戦術の大まかな設定は、ハイプレス・Tiki Takaの3-2-2-2-1です。

リベロは以下の動画のようにボールがミドルサードに進むと、適切なタイミングで前に上がり、中央の選手の数に厚みを与えます。


このように自陣1/3では3バックでビルドアップに参加し、ミドルサードでは比較的選手の裁量でどこにいるべきかポジションを判断しているようでした。

守備に関しては、Coaches Voiceに書かれていたリベロのプレイのように、DFラインの少し後ろでプレイするということはFM23ではあまり見られませんでした。そのため、通常のCBと同じように扱って良いと思います。

以下で2つの戦術の紹介と、相手の守備配置に応じた自陣1/3での安定したビルドアップのための工夫を説明します。

3-2-2-2-1  Libero (vs 4-4-2, 4-2-3-1, 3-4-2-1, 5-3-2)


vs 4-2-3-1, 4-4-2

4-2-3-1(守備時4-4-2)に対するビルドアップです。以下の画像でArsenalの守備はは4-2-3-1ですね。中央は6 vs 6で数的同数の状況です。ビルドアップで前からプレスにはめられる可能性があるのがわかると思います。対4-2-3-1でのポイントはRW(右ウィング)です。RWはLWに比べ、一段低い位置に戦術設定されており、よりボールを降りてきて受ける、サポートの意識が強いです。降りてくるRWに相手のLBが付いてくる場合には、背後のスペースをAMが狙うことができるはずです。


4-4-2を相手にする場合、相手の前線2枚に対してこちらは3枚が相対し、中央で6 vs 5で+1の数的優位を保てます。



vs 5-3-2

5-3-2に対するビルドアップです。LWBのIWBの役割が重要です。相手の前線2枚に対してこちらの最終ラインが3枚。相手の前線2枚の脇からの持ち上がりができます。そして、中盤も合わせると、相手の2+3=5枚に対して、こちらは3+3=6枚と+1の状態で、安定した中盤中央でのビルドアップを可能にします。こちらのLWとRWはワイドに張ったポジションを取り、相手を水平方向にコンパクトさを失わせようとします。









3-2-2-2-1  Libero (vs 4-3-3, 4-1-4-1)


vs 4-3-3

1つ目に紹介した戦術では相手の守備が4-3-3, 4-1-4-1の場合、プレスではめられる可能性があるため、この2つめの戦術を用います。1つ目の戦術でのビルドアップの形は3-3-4のような形です。これに対して、4-3-3でハイプレスを当てると、見事に噛み合わせてしまいます。このように噛み合わせが良い場合、相手の選手を1人でスキルで剥がせれば大きなチャンスになりうるんですが、剥がせない場合ボールの行き場を失いやすいです。それを回避するため別の形のビルドアップを用いるということです。




この2つめの戦術はやや改良の余地があるかと思います。下の対戦表のように多くのポイントを落としています。4-3-3を使う相手に強豪が多いというのもあるのですが、さらに勝ちを増やすに、何かしらくうができたらよかったなと思います。



Tips

試合前にホームアンドアウェーや相手のCFの特徴に応じて、あるいは試合中の状況に応じて調整する必要のある項目は、メンタリティーと、Liberoに配置する選手の選択です。

相手のワントップの選手が足が速かったりオフザボールが優れている場合には、Riceを使うと、簡単に裏どりされるため、Liberoに配置する選手は足の速さと守備能力がより高い選手を配置しました。Declane Riceはスピード・加速力ともに13で一流のカバー能力とはいえません。そこで代わりにスピード15・加速力13のThilo Kehrerを使いました。

アタッキングサードの変化するクロスを入れろの指示は、CFのタイプに応じて変えるのがおすすめです。



結果

Premier Leagueでは勝ち点83で優勝しました。勝ち点的にはそれほど良くないかなと思います。国内のカップ戦はLiverpoolとCityに負けて敗退。ECLはFiorentinaに敗退。

 
狙い通り、ボール保持率は1位でした。あと失点が少なかったですね。これはあまり意図していませんでしたが、単純にボール保持の時間が長いことで、相手の得点機会を減らせていたように思えます。極端なtikitakaの戦術はFMでは大量得点に繋がらない気がします(僕の戦術組み立てが下手なだけ?)。

 
守備の効率の分析を見ると、被シュートが少ないですね。キーパーの好セーブにも助けられた形でしょうか。


チームのエースのDeclan Riceが攻守両面で活躍する戦術を描きましたが、平均評価は7.0と悪くはないですが素晴らしいとはいえない微妙な感じになってしまいました。



役割の説明にリベロ(攻撃)はより高い位置まで上がってロングシュートを打ったり・・と書いてあるには、xGは1.61と低いんですよね。xAは3.98なので多少マシですね。CBとして空中戦で圧倒できるというわけではないですし、FM上の上の画像であげられているようなスタッツを基準にした評価ではあまり高く評価されないのも仕方ありません。


FMの評価はアレですが、試合を見ていると、いい働きをしているように思えました。適切なタイミングで中盤に上がり、多くのスルーパスを通していました。また、リベロはセンターでボールを捌く際に、CBの中で最も相手からのプレッシャーを受けやすいポジションです。失点につながったミスは1度もなく、堅実な仕事をしていました。

移籍

夏の移籍市場でCBの選手層があまりにも薄かったため、Sebastiaan Bornauwを獲得。冬には、LSBのJavi Galan・Roberto Firmino・MFのRenato Tapiaを過密日程に備えて獲得。


SBの選手でWB適性の低い選手などは出場機会が作ってあげられないので売却しました。


まとめ

いかがだったでしょうか?けいさん?

それなりに事前のデザイン通りに機能する戦術を組めました◎。ただ、リベロを使うことがWest Hamの力を最大化できたのかは若干疑問符がつく結果かなと思います。やはり、今のFMのシステムではリベロを使うことはできるが、最適解ではないと感じました。例えば、リベロを使うとRest Defense(ボールを保持している時の守備の構造)がひどいものになります。以下の画像のように、最終ラインの中央に大穴が空いた状態や、ややバグ?のように見える不自然な選手の配置になってしまい、これは好ましくありません。



今回の戦術よりも、シンプルな4-3-3で戦術を組んだ方が、得点は伸びるのではないかと思います。また、Riceを使うならリベロではなく、一つ前のポジションで使った方が強いのでは?と途中で気づいてしまいました笑。

結論。リベロを活かせはしたが、FM23でリベロを用いることでチームの戦力を最大化することは極めて難しい