今回はFM23で対戦相手が取ってくるコーナーキックのパターンを分析し、効果的なコーナーキックの設定を考えてみました。また、フリーキックに関しても攻撃設定のアイディアを1つ出してみました。

全試合でセットプレー時の相手の対応を分析し設定を調整するのは面倒ですが、どうしても勝ちたいようなChampions Leagueのトーナメント戦を想定した場合、有効的な攻撃手段は喉から手が出るほど欲しいものではないでしょうか?
 

コーナキック

初めに成果物を置いておきますね。こんな感じです。至って普通に見えるかもしれませんが網羅的に対戦相手の守備を分析した上での最適解の一つだと考えています。


分析とデザイン

相手のコーナーキックでの守備の仕方を把握していれば、有効的な攻撃が可能になります。当然逆も然りで、どうすれば攻略が難しい守備を敷けるかもわかります。

例えば以下のArsenalのコーナーキックは相手の配置を考慮してデザインされたプレイです。(The Atheletic, ”Arsenal’s clever corners and their importance in the Premier League title race”より引用・一枚目のみ加筆

Crystal Paraceはゴールエリア内に4人のゾーンマーキングの選手と1人の選手をショートコーナーを警戒させるためにBox角付近に配置しています。


数的優位があるエリアと相手DFのカバーが薄い、難しいエリアはどこでしょう?
ー ペナルティーアークの付近で1 vs 2の 数的優位な状態があります。他のエリアでは数的同数。ゴールエリア内は数的に不利です。また、ゴールエリア内のニアは特に相手DFのカバーが手厚いです。一方でBox内のファー角あたりのスペースはが最もカバーが薄そうに見えます。

ペナルティースポット付近に位置するGabrielはニアにフェイクランすることでマンマークで対応しているDFを引きずります。またXhakaはセカンドボールの回収のために少し後退します。そして代わりにZinchenkoがBox外から走り込みファーでフリーで合わせ、折り返します。



このように相手の守備の仕方を把握していれば、有効的な攻撃をデザインできるというわけです。

では、こんな感じのかっこいいデザインプレーをFM23で考えてみようとソフトを立ち上げると、選手を思ったエリアに走らせたりすることが難しいことに気づきます。ニア・ファーを攻撃もそれぞれの指示に1人の選手しか割り当てられなかったりと不自由が多く、デザインすることは非常に困難です。残念ながら、この制限された設定の自由の中で効率的な設定を考える必要があります

そのため、今回の記事では、分析は丁寧に行なったものの、プレイのデザインは、狭い自由度の中でなんとか考え出したものになっています笑。

分析

手法

1. ある1つのCKの攻撃・守備設定で1シーズン回し、リーグの対戦相手のCKの守備・攻撃対応を10試合程度確認
2. CKの攻撃・守備設定を変えながら相手の対応を確認

◎観察項目
守備
・vs Rest defense (=Rest offense)(前線に何人選手を残すか)
・Box内・付近での配置と対応

攻撃
Rest defense (後方に何人選手を残すか)
・Box内・付近での配置と対応
・キックのコース

※ Rest defense(Rest defenseは一般的にはオープンプレイでの文脈で使われており、コーナーキックやフリーキックの文脈でRest defenseという用語が一般的に使われているかはわからないのですが、便利なので使用しています。

”Rest defence”はボールのポゼッションを失った時にカウンタープレスとディフェンスへの適切な移行を行うための攻撃側のチームの構造を説明するための戦術用語です。

詳しくは以下の記事を参照ください。

結果

1つのCKの攻撃・守備設定で1シーズン回し、リーグの全対戦相手のCKの守備・攻撃対応を確認にはリベロの記事で用いたWest Hamのプレイデータを使用して確認しました。

使用したCKの攻撃・守備設定はそれぞれ以下の通りです。どこかのサイトから「つよい」って書いてあったのを拝借して使っています。

攻撃

キックのコースはニアです。


守備





West Ham - Liverpool戦を例にして、攻撃と守備の関係を見てみましょう。West Ham目線で分析されています。

まずはWest Hamが攻撃・Liverpoolが守備です。

Rest defenseをみてみましょう。West HamのRest defenseは1st line + 2nd line : 2+1の構造です。そして、Rest defense vs Rest offenseの構造はWest Ham vs Liverpool : 2+1 vs 0+1となっています。


1st lineにはLiverpoolは1人も選手を配置しておらず、West HamのDFは1人で十分です。一方で2nd lineではLiverpoolは1人配置値しており、数的同数です。DFを2人配置できれば数的優位になり、セカンドボールの回収の可能性が上がります。この場合、West Hamは選手を1人、1st lineから2nd lineに移動させることで、両方のlineで数的優位を作れます。



West Hamの攻撃設定は前述のとおりです。Liverpoolはゴールエリア内を3人でゾーンで守り、6人の選手がマンマークで対応しています。




次にWest Hamが守備・Liverpoolが攻撃です。

LiverpoolのRest defenseは1st line + 2nd line : 1+2の構造です。そして、Rest defense vs Rest offenseの構造は Liverpool vs West Ham : 1+2 vs 0+1となっています。Liverpool目線では両方のラインで数的優位に立っており問題なしです。West Ham目線ではこの数的優位の安定な守備構造を不安定化するための配置に変えたいところです。


West Hamの守備設定は前述のとおりです。Liverpoolの攻撃は、ゴールキーパーをマークしている選手が1人と、5人の選手がゴールエリアの外に位置しています。West Hamとしてはゴールエリア内を3人でゾーンで守っており、他の選手にはマークをつけているどこを狙われてもそこそこ安定的な守備といえます。



このように、CKでの攻防にはRest defense vs Rest offenseでの駆け引きとBox内での駆け引きの二つがあります。


まずは、Rest defenseとRest offenseに関して観察した結果分かったことを書きます。

Rest defense

コンピューターが操作しているチームのRest defense構造は1+2がデフォルトです。こちらが相手のRest defenseを不安定化させるような設定にしない限り、1+2に設定されています。以下の画像のようにこちらが前線に選手を数人配置して変更すると、対応して設定を変えてきます。



vs Rest defense(Rest offense)

チームによりまちまちです。試合開始時、つまりイーブンの場合には0+0か0+1でした(ただし極端な実力差のあるチームは検証していない)。ビハインドの状況になると、0+1や1+1に変更します。以下の画像のように試合の終了間際でビハインドでは3+0のように極端な配置をとる場合もあります。


一方リードすると、初期は0+1であったものを0+0に変更してきます(ぐぬぬ手堅い)。



次に、Box内の守備の攻防に関して観察した結果分かったことを書きます。

まず、Box内の守備の設定と選手の挙動ですが、「後ろに下がる」に設定されている選手は「選手をマークする」に設定しなくても、勝手にマンマークで守備対応します。


ただ、「後ろに下がる」の設定だけでは、マンマークをする相手をヘディングの強さや守備能力に基づいて最適化はしてくれません。

この場面ではBowen vs Virgil van Dijkというマンマークの組み合わせになってしまっています。同一の試合で確認すると、マークする選手はランダムに決まります。



また、Box内でフリーな選手が発生しないように選手が対応するよう設定されています(ただし、フリーな選手が発生する場合も時折発生します。特にGkをマークするに設定されている攻撃の選手は無視されやすいです。)。


対応する選手は一番近くにいる選手が対応します。以下の例では、ゴールエリア内のファーをゾーンで守るに設定されている選手が駆り出されてマンマークで守備対応していますが、このフリーの選手がペナルティーアーク付近にいた場合には、ペナルティーアークにいるBox外の選手が対応します。





コンピューターの守備設定

コンピューターの守備設定は(10人-Rest offenseのための選手の人数)により変わるのですが、基本的には3 or 4人がゾーンでゴールエリア内を守り他選手がマンマークで守ります。

結論から書くと、こちらが得点の可能性をあげるためにはゾーンで守っている選手の人数を削る必要があります。

以下のLeedsの守備はゾーンが3人でマンマークが6人です。


この場面ではニアでボールに合わせるタイミングでボールの付近は数的同数になっています。


一方でBournemouthの守備を見てみましょう。ゾーン4人とマンマーク6人です。


競り合うタイミングでボールの周囲は4 vs 2で数的不利の状況です。ゾーンに4人いる場合競り合いはかなり不利です。ほとんどボールに合わせることはできません。



また、ゾーンで設定されている選手の順番ですが、これは左右どちらからのコーナーでも同じに設定されています。つまり、以下の画像を例に説明すると、左からPersic-Lengelt-Romero-Perisicの順番は、右サイドからのCKでも左からのCKでも同一であり、この中で最も空中戦に弱いのはPerisicであるため、左からのCKでニアに合わせる場合の方が空中戦で勝てる可能性があがります。





コンピューターの攻撃設定

まず、ショートコーナーを使うチームはありませんでした。

Rest defenseのデフォルト設定が1+2であるため、Box内の選手は10-3-1(キッカー)=6人です。攻撃の設定はランダムな印象を受けました。「ファーを攻める」や「ニアで待つ」、「GKをマークする」に1人設定されてたりしますが、基本ほとんどの選手は「前に出る」に設定されていると思われます。キックのコースはランダムな印象です。「ゴールエリア」に設定されていると思われます。時折論理的な法則性がみられます(キッカーの判断力?などが高い場合、空中戦が得意な選手を的にしている可能性があります。)。

「効果的な設定は?」

攻撃設定

基本的な考えの方針として、相手のゾーンの守備の人数を減らした上で、ゾーンの守備の薄いエリアをキックの標的にようと考えました。前述のとおりマンマークできていない余った選手に対しては近いエリアから選手が補充されるため、ゾーン守備の薄いエリアはある程度ランダムで発生してしまいます。面倒です。


つまり、ゴールエリア内の狙ったエリアのゾーン守備を薄くさせる方法を考える必要があります。そして、思いついたアイディアが、『ショートコーナーデコイ』です。


選手を1人、「ショートパスを受ける」に設定すると、対応するために相手選手が出てきます。ショートコーナーを一切使わなくても、コンピューターは対応するための選手を配置してくれます。

この時、どの選手が対応するために出て行くかというと、最も近い位置にいる、ゴールエリア内ニアをゾーンで守っている選手になります。これがショートコーナーデコイ』のギミックです。

下の画像の場面では狙い通りの選手がショートコーナー対策に出向いていますね。


そして、やや手薄くなったニアポストでクロスに合わせるというのがデザインしたコーナーキック戦術です。

こんな感じの設定になりますね。「ニアポストを攻撃」か「前に出る」の選手が頭で合わせるため、ここに空中戦に強い選手を配置しましょう。






Rest defenseですが、上の画像の設定のように1+2構造をお勧めします。相手のRest offenseが0+0の場合には、Rest defenseを1+1構造に変更する必要があります。(下の画像)



また、相手のRest offenseは0+1であることが多いため、Rest defenseを思い切って、最初から1+1や0+2にするというアイディアもあるかとおもいますが、1+2構造をお勧めします。というのもショートコーナーデコイ』にはデメリットがあり、ショートコーナーのための選手はセカンドボールの回収やボールの所有権を失い、カウンターを受けた場合の守備対応がほとんどできず、カウンター時のリスクが大きいため、確実にセカンドボールを回収できるように1+2の設定をおすすめします。2018WCでの日本vsベルギー戦の失点もショートコーナーからセカンドボールを回収された結果でした。あの試合でのRest defenseの攻防は2+1 vs 1+1でした。

またGKを前線に上げることも可能のようですが、試しても見ましたが明らかにリスクの方が大きいです。終了間際では使えるかもしれないですが・・・


時折、「GKをマークする」の選手を相手選手が無視し続ける時があります(バグに近い?)。無視されるとゾーンの選手の人数を削れないため、設定を変えたほうがいいです。「前に出る」に変更しましょう。

↓Media Fireでのダウンロード先



ただ、このギミックがうまく機能しないケースがあります。おそらくコンピューター側が「キッカーにプレス」に選手を割り振った結果、ゴールエリア内をゾーンで守る選手が出ていってくれなくなります。この場合には設定の変更が必要です。このままの設定ではデメリットの方が大きくなってしまいます。


試合中に気づいたら設定を変更するために、相手のゴールエリア内に配置された選手の順番を確認します。


空中戦が弱い選手がどこに配置されているかを確認して、その選手と自チームの空中戦に強い選手が競り合えるように選手の配置とコースを変更します。今回のケースであれば、右からのコーナーの場合にはファーに、左からのコーナーの場合にはニアに設定します。



この場合には、ショートコーナーデコイはデメリットの方がメリットより大きいため使いません。






守備設定

守備設定は、基本的にはそれほどいじらなくてもいいかなと思います。できることがあるとすれば、守備能力の高い選手がマンマーク要員として余っているのであれば、「高い選手をマーク」に設定しておくくらいです。







フリーキック

次はフリーキックに関してです。まず、初めに申し出ますと、フリーキックの丁寧な分析は諦めました。というのもFM23ではフリーキックが4種類に区分されていますが、どの位置からのキックが4つのうちどの設定に適用されるのかがいまいちわからなかったためです。(詳細に調べればわかるかとは思いますが面倒でした🙇🙇🙇)

ネット上にあるFM23のフリーキック設定をいくつか見ましたが、Rest defenseが過剰なものが多いかと思います。Rest defenseは必要最低限にして、前線に選手を配置して、相手を押し下げた方がいいかと思ったのでその辺を考慮して設定しなおしました。

また、間接(サイド)で効果的な設定を考えてみました。やや参考にした実際に試合での戦術は以下のものです。Total Football analysis, Tactical Analysis: Five interesting free-kick routinesより引用。

Jose MourinhoのRomaですね。キックはファーをターゲットにします。選手の群れがニアに走り込み、回り込むようにターゲットの選手がファーに入り、合わせるという形です



戦術の設定は以下の通りです。


こんな感じで数的不利でない状況で競り合えます。










まとめ

ここまで読み飛ばさず読んでくださった方、ありがとうございます。丁寧に分析した結果、決定版はこれだ!!みたいなことが言えればよかったんですが、そんなに甘くないですね。初期設定から試合を見ながら逐次変更しなくてはならないというかなり面倒な設定になってしまいました。

面倒な方は、とりあえず一番最初のCKを確認して、選手の配置からファーかニアのどちらに設定するかだけいじるのがいいかとおもいます(それだけでもかなり手間がかかりますが・・・)。まぁCL決勝の時であれ、絶対に勝ちたい試合で手堅く試合を有利にできる設定ではあると思います。

セットプレイの設定をまとめたものはこちらです。


コーナーを10チーム以上分析した過程はこちらのPDFで確認できます。