こんにちは。今回はRoberto De Zerbi監督の下でのBrighton & Hove Albionの戦術をFM23で作ってみました。今回も割と力作です。

NapoliのSpalletti監督で記事を書いていたんですが、Spalletti監督の思考や哲学などの情報が十分に集められず(英語ではなくイタリア語でググるべきか?)、執筆を進めるのが億劫に感じるようになっていました。
そこで代わりにまだ試合数が少なく、分析のカロリーが少ないBrightonでのDe Zerbi監督を選んでみましたが、思いの外戦術分析にのめり込んでしまいました。また記事少し長いですが、楽しんでいただけると幸いです。



今回は、前回Cityの記事を1つにまとめたせいで開くのにとても重くなってしまい、スマホユーザーに不便をおかけたことを反省して、記事を複数に分割することにしました。なのでこちらはPart. 1です。

まず、De Zerbiという人物がどんな人なのか知ることから始めます。個人的には、それぞれの監督の哲学や戦術は他の指導者や選手としてのプレイ経験・指導者としての経験などから大きく影響を受けており、監督の経歴や人となり考え方を知っていた方が戦術の裏にある背景まで見通せて面白いと思っているので紹介しています。



Brighton under De Zerbi

※The Athleticに非常に上質な記事 "Why Brighton hired De Zerbi: Guardiola’s influence and ‘Potterball’ evolution" があったのでそちらの記事から参考または引用。参考または引用部分は明記してあります。有料記事ですのでできるだけ参考・引用は控えるよう努めています。ヨーロッパサッカーとくにプレミアリーグに興味があり英語に抵抗がない方にはお勧めです。

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De Zerbi監督は、Brightonで40ヶ月指揮をとっていたGradam Potter監督の後任として9月18日にBrightonの監督に就任しました。

Brightonのオーナー兼会長を務めるTony Bloomはデータに基づいた採用方針を取っており、Potterの築いたチームを引き継ぐのに適した特徴を持つDe Zerbiを採用しました。PotterがChelseaを退団したのは9月8日であり、10日間という短い時間で後任を決めたのです。De Zerbiがフリーだったことも素早い遂行の助けになったのは間違いないでしょう。


Who is De Zerbi ??

監督としての経歴は2013年からでもう10年間というところです。監督としてのスタートはDaeio FoarioというSerie Dのイタリアのクラブでした。一歩づつステップアップし2017年にSerie AのBeneventoの監督になり、その後Sassuoloの監督に就任し3シーズンを過ごします。

Sassuuoloは2008年からSerie B、2013年にSerie Aに昇格したトップディビジョンのクラブとしては歴史の非常に浅いクラブです。しかし、2020-2021シーズンには前半戦、非常に好成績を残し、第9節の段階で3位、その後折り返しの19節で9位と少し沈みましたが、最終的に8位というもう一歩でで大陸大会という結果を残しました。

その後Shakhtarに移り、プレイオフを制しチャンピオンズリーグのグループステージに進出しました。ShakhtarがCLでレアル・マドリードと対戦したことを覚えている方もいるのではないでしょうか。しかし、ロシアのウクライナ侵攻が起こり、ウクライナを去ることになり、しばらくフリーの状態でした。

De Zerbiはイタリアでは今では若く有望な有名な監督です。そのスタイルからイタリアのPep Guardiolaと呼ばれることもあります。選手としては主にイタリアでプレイし、15年間のキャリアがあります。攻撃ミッドフィルダーとしてプレイしており、プレイヤーとしてのキャリアが監督としての戦術の嗜好を形成しているように思われます。

De Zerbiの監督キャリア
Transfermarktより引用


 De ZerbiとPep Guardiola

前任者のGradham Potterが14年前に監督としてのキャリアを始めた際、Pep GuardiolaのBarcelonaから着想を得た戦術を組んだように、De ZerbiもPep Guardiolaと関わりがある監督です。

The Atheleticによると、De ZerbiとPep Guardiolaとの交友は2013年、De Zerbiが監督としてのキャリアをスタートした時からあり、De ZerbiはBayernのトレーニングを見学しに行きました。この時にはDe Zerbiが教えてもらう側でしたが、時が経てばGuardiolaが教えてもらう側に回ることもあるようです。というのもDe ZerbiはShakhtarでサイドバックを絞り2-3-5の形を取る戦術を行っていましたが、Pep Guardiolaはこれから学び、Cityの戦術に取り入れました。このCityの2-3-5についてはManchester Cityの分析記事で紹介してます。

Shakhtarのビルドアップ
https://www.youtube.com/watch?v=6YZehxUnnNI&ab_channel=FootballKNより引用


 De ZerbiとGraham Potter

De ZerbiとGraham PotterがPep Guardiolaとの関連性いう意味で共通しているという点以外にも類似している点があります。それは選手の育成能力です。Potterの下で指導を受けたBen White・Yves Bissouma・Marc Cucurellaがビッグクラブに移籍したように、De ZerbiがSassuolo指揮時指導したKevin Price Boateng・Stefano Sensi・Merih Demiralは指導後大きく飛躍しました。


 De Zerbiの考え

The Athleticsで紹介されているDe Zerbiの言葉はDe Zerbiという監督の考え方を知る上で非常に助けになるのでここで紹介します。意訳してあります。

Arrigo Sacchiはサッカーを集団という視点でしか見ていない、一方私は各々の選手の能力を最大限に引き出すことがチームを強くすると確信している。ただ、それは利己的で自己中心的にならない限りだけどね。
“Sacchi only sees football in terms of the collective. I, on the other hand, am convinced that a team can be developed by getting the best out of individuals — as long as it doesn’t lead to the selfish and the egotistical.”

私は個人のスキルやテクニックに関心があります。それらがなければ、自陣でボールを保持できません。パスを受ける際の姿勢や、チームメイトの利き足へのパスといったレベルまでの試合の理解、そしてミスを受け入れる勇気だよ。
“I’m interested in individual skill and technique, without which you can’t keep the ball in your own half,” he says, “an understanding of the game, which comes down to concepts like the right posture with which to receive a pass and being able to pass to a team-mate’s preferred foot, and the courage to accept you may make a mistake.”


下のツイートではDe Zerbiがボールを足裏でコントロールする技術の利点について語っています。


 私は自身が興奮を覚えたチームからアイディアを得てきました。Maurizio Sarriの Napoli・Luciano SpallettiのFrancesco Tottiがfalse nineとして機能したRoma・ GuardiolaのBarcaとBayernとCity・2016年にWorld Cupで優勝したGermany・Lucien FavreのBorussia Monchengladbach・Imanol Alguacilの Real Sociedad・ Quique Setienの Las Palmas・Bielsaの Athletic Bilbao。私はこれら全てに自分のアイディアを加えたんだ。

“I’ve tried to take things from teams that excite me,” he told Spanish newspaper El Pais. “Maurizio Sarri’s Napoli. Luciano Spalletti’s Roma, when Francesco Totti was a false nine. Guardiola’s Barca, Bayern and City, Germany’s 2016 World Cup-winning team, Lucien Favre’s Borussia Monchengladbach, Imanol Alguacil’s Real Sociedad, Quique Setien’s Las Palmas, Bielsa’s Athletic (Bilbao). I’ve added my own ideas to all these.”

 

攻撃的なサッカーが好きなのは事実だ。1週間のうちの8割は攻撃のために使う。だからあらかじめマーキングするような構造(トランジションからの失点を防ぐためにチームがセットアップされているような構造)をとっているんだよ。

“It is true, though, that I like to play attacking football. Eighty per cent of my work in the week is dedicated to the attacking phase. That’s why I use pre-emptive marking structures (his attacks are structured in such a way that the team are set up to defend the transition).


もし本当に守備のための用意が2割だけであれば、きっとチームは負けるだろう。というのもそれは攻撃の練習をする際に、ポジションによく注目して、ボールを失った際に危険な形にならないようにしている。攻撃と守備の両局面をひと繋ぎでみているんだ。

“If I limited the amount of work I do on the defensive phase to just 20 per cent, we would lose every game. But I don’t. When I train the attack, I pay close attention to our positioning so we aren’t unbalanced when the ball is lost. I have united both phases.” 



これでPart. 1は終わりです。次のPart. 2に続きます。
Part.2では過去に指揮したクラブでの結果について見ていきます。